【91】セカンドメッセンジャー
アドレナリンやインスリンなどのペプチドホルモンは、高分子のために細胞膜を通過できない。
そこで、ペプチドホルモンなどがリガンド(受容体に特異的に結合する物質)として細胞膜の受容体に結合すると、細胞内ではcAMP(サイクリックAMP)やカルシウムイオンなどが細胞外からの情報を引き継いで伝える分子〈セカンドメッセンジャー〉として働く。
肝細胞の細胞膜では、アドレナリンと結合したGタンパク共役受容体が、細胞内でGタンパク質を活性化し、Gタンパク質と結合した近くの膜タンパク質(アデニル酸シクラーゼ)が、cAMPを合成する。
cAMPは、肝細胞内に入れないアドレナリンの情報を引き継ぐ〈セカンドメッセンジャー〉として、肝細胞内でリン酸化酵素(キナーゼ)を活性化、キナーゼは別の酵素(ホスホリラーゼ)を活性化、ホスホリラーゼがグリコーゲンをグルコースに分解する。
筋細胞(筋繊維)では、アセチルコリンと結合したリガンド依存性ナトリウムチャネルが開くことでナトリウムイオンが流入して膜電位が脱分極し、T管を介して筋小胞体に伝導した膜電位の変化によって、筋小胞体の電位依存性カルシウムチャネルが開いてカルシウムイオンが細胞質中に放出される。
カルシウムイオンは、筋細胞内に入れないアセチルコリンの情報を引き継ぐ〈セカンドメッセンジャー〉として、トロポニンに結合し、筋原繊維の滑り込みのきっかけとなる。
【補足】
- ステロイドホルモン(細胞膜の脂質二重層を通過できる。糖質コルチコイド、鉱質コルチコイドなど。)
- ペプチドホルモン(タンパク質でできた高分子のホルモンで、細胞膜を通過できない。アドレナリン、インスリンなど。)
- リガンド(受容体に特異的に結合する分子。サイトカイン、ホルモン、神経伝達物質など、細胞ごと・受容体ごとに様々な分子がリガンドとなる。)
- GTP(グアノシン3リン酸。)
- ATP(アデノシン3リン酸。エネルギーの通貨。)
- cAMP(サイクリックAMP。肝細胞におけるアドレナリンのセカンドメッセンジャーなどとして働く。)
- カルシウムイオン(筋細胞におけるアセチルコリンのセカンドメッセンジャーなどとして働く。)
- IP3(イノシトール3リン酸。血管平滑筋におけるアドレナリンのセカンドメッセンジャーなどとして働く。)
- Gタンパク質(GDPと結合している間は不活性、GTPと結合すると活性化するタンパク質。)
- Gタンパク質供役型受容体(細胞膜に埋め込まれた膜タンパク質。細胞膜の外側に受容体部分があり、細胞膜の内側にはGタンパク質が結合している。受容体にリガンド(受容体に特異的に結合する物質)が結合すると、Gタンパク質を活性化する。)
【参考資料】
- 吉里勝利(2018).『改訂 高等学校 生物基礎』.第一学習社
- 浅島 誠(2019).『改訂 生物基礎』.東京書籍
- 吉里勝利(2018).『スクエア最新図説生物neo』.第一学習社
- 浜島書店編集部(2018).『ニューステージ新生物図表』.浜島書店
- 大森徹(2014).『大学入試の得点源 生物[要点]』.文英堂