【97】DNA複製装置
DNAの複製は、“複製起点(レプリケーター)”に結合した2つの“DNAヘリカーゼ”が、それぞれ複製起点の両方向にDNAの二重らせんを“ほどき”ながら進んでいく。
二重らせんが2本のヌクレオチド鎖にほどかれると、それぞれを鋳型鎖として、DNAポリメラーゼ(DNA合成酵素)が新生鎖を合成し始める。
DNAポリメラーゼ(DNA合成酵素)は、すでにあるヌクレオチド鎖の“3‘末端”にしか、新たなヌクレオチド(デオキシリボヌクレオチド3リン酸)を付加できない。そのため、二重らせんがほどけていく方向と同じ方向へ“連続的に合成されるリーディング鎖”と、二重らせんがほどけていく方向とは逆方向へ”断続的に合成されるラギング鎖”との違いが生じる。
実際には、リーディング鎖とラギング鎖のそれぞれを合成する2つのDNAポリメラーゼが、DNAヘリカーゼをはさんで一塊の複合体(複製装置)となっている。この時、ラギング鎖側のDNAポリメラーゼは、前後の鋳型鎖を“たぐり寄せ”ながら新生鎖を合成するため、“鼻提灯”の様なループ状の構造ができる。
【補足】
- DNAヘリカーゼ(DNAの二重螺旋を“ほどく”酵素。)
- DNAポリメラーゼ(ヌクレオチド鎖の“3‘末端”に、新たなヌクレオチドを付加する“DNA合成酵素”。プライマーを“5‘末端”側から分解する“ RNA分解酵素”でもある。)
- DNAリガーゼ(DNAのヌクレオチド鎖の3’末端と5‘末端を連結する酵素。)
- プライマー(DNAポリメラーゼは、“すでにある”ヌクレオチド鎖しか伸長できない。先に短い RNAが鋳型ヌクレオチドに結合し、DNAポリメラーゼが結合するためのプライマー“釣り針”となる。)
- デオキシリボヌクレオチド3リン酸(ヌクレオチド鎖の材料となる。A(アデニン)、T(チミン)、G(グアニン)、C(シトシン)をそれぞれ構成要素とするdATP、dTTP、dGTP、dCTPの四種類がある。いずれも2個のリン酸が外れてヌクレオチド鎖の3’末端に結合する。)
- 複製フォーク(DNA複製の際、二重螺旋がほどけて“二又のフォーク”の様な姿となる。)
- リーディング鎖(DNA複製の際、“複製フォーク”の根元に“3‘末端”を向けて伸長していく“新たなヌクレオチド鎖”。)
- ラギング鎖(DNA複製の際、“複製フォーク”の先端に“3‘末端”を向けて伸長していく“新たなヌクレオチド鎖”。)
- 岡崎フラグメント(ラグング鎖が伸長する際に、断続的に作られる短いヌクレオチド鎖。DNAリガーゼによって連結され、長いヌクレオチド鎖になる。)
【参考資料】