【101】日長と花芽形成
植物にとって“繁殖”への準備開始を意味する“花芽形成”は超重要イベントである。“花芽形成”の指標として日長(あるいは連続暗期の長さ)を利用することで、同じ地域に生息する同種個体の繁殖時期を揃えることができる。
植物にとって“花芽形成”は繁殖準備の開始を意味するので、“花芽形成”より前は栄養成長(茎の成長&葉の展開)をひたすら続けることになる。
多くの短日植物や長日植物では、日長(連続明期の長さ)ではなく、連続暗期の長さが一定の長さ(限界暗期)を越えるかどうかが花芽形成の指標になっている。
植物によって連続暗期の長さの基準(限界暗期)は異なるため、長日植物どうし、短日植物どうしでも、花芽形成の時期は互いに異なる。
【補足】
- 光周性(日長などの光条件に伴って見られる、生物の反応の周期性。)
- 日長(1日の中の昼間の長さ。太陽の一部が地平線上に見え始めてから、太陽の全体が地平線下に隠れるまでの時間。)
- 長日植物(日長が長くなって、連続暗期が限界暗期より短くなると花芽を形成する。春に開花するダイコン、キャベツなどのアブラナ科の植物や、コムギなど。夏期の短い高緯度に生息する植物に多い。)
- 短日植物(日長が短くなって、連続暗期が限界暗期より長くなると花芽を形成する。秋に開花するダイズ、アサガオ、コスモス、オナモミ、イネなど。)
- 光中断(短時間の光照射で、植物の連続暗期を中断すること。特に、短日植物における赤色光での光中断は、FR型フィトクロムを増やして花芽形成を阻害する。)
- フィトクロム(赤色光を受容するR型と、遠赤色光を受容するFR型が可逆的に変化する。FR型フィトクロムは、花芽形成に関わる遺伝子の発現を抑制する。)
【参考資料】
- 吉里勝利(2018).『改訂 高等学校 生物基礎』.第一学習社
- 浅島 誠(2019).『改訂 生物基礎』.東京書籍
- 吉里勝利(2018).『スクエア最新図説生物neo』.第一学習社
- 浜島書店編集部(2018).『ニューステージ新生物図表』.浜島書店
- 大森徹(2014).『大学入試の得点源 生物[要点]』.文英堂