【89】ターンオーバー

多細胞生物の個体を構成する細胞や、細胞を構成する有機物は、常に分解されながら合成されている。新しい細胞や有機物が、古い細胞や有機物と入れ替りながら、”同じ個体”や”同じ細胞”として生きている。

上皮幹細胞

皮膚の最も外側の角質層は、死細胞が積み重なっている。ウイルスは生きた細胞に感染して増殖するため、死細胞からなる角質層には感染できない。

角質層の下で分裂し続ける幹細胞は、自己複製能力と、ケラチンを蓄積した角質細胞(角化細胞)へ分化する能力の両方をもっていて、娘細胞の片方は幹細胞に、もう片方は角質細胞(角化細胞)に分化する。

腸幹細胞

小腸の”柔毛”の谷間にある”腸腺”では、腸幹細胞が分裂を繰返している。

腸幹細胞も、細胞分裂を繰返す能力と、小腸上皮細胞へ分化する能力の両方をもっていて、片方の娘細胞は腸幹細胞に、もう片方の娘細胞は小腸上皮細胞に分化する。

小腸上皮細胞は、2~4日かけて柔毛の先端向かって移動し、やがて脱落する。

【補足】

  • ターンオーバー(全体としては同じ外観や構造を保ちながら、個々の構成成分が入れ替る現象。)
  • 新陳代謝(新しいものと古いもの(新陳)が、入れ代わる(代謝)こと。)
  • 動的平衡(個々の構成成分が入れ替りながら、全体として同じ外観や構造が保たれている状態。)
  • ケラチン(爪や髪の毛の主成分となるタンパク質。細胞骨格の中間径フィラメントの構成成分で、細胞膜や角膜などの生体膜を裏打ちして”形”を保っている。)
  • 細胞周期(多細胞生物の細胞の一部は、間期と分裂期を周期的に繰返している。)
  • 幹細胞(Stem cell/多細胞生物の細胞の中で、自己複製能力と特定の細胞の分化する能力の両方をあわせもつ細胞。)
  • 生理的再生(多細胞生物の組織では、幹細胞から分化した細胞によって、定期的に細胞が入れ替る。)
  • 外傷的再生(傷ついた組織では、幹細胞の増殖&分化や、脱分化した細胞の増殖&再分化によって、失われた細胞が補充される。)
  • 生体防御(物理的・化学的な方法で体内への病原体の侵入を防いだり、体内に侵入した病原体を排除するしくみ。)
  • 角質層(皮膚の最も外側にある死細胞の層。ウイルスは生きた細胞に感染して増殖するため、死細胞には感染できない。)
  • 粘液(消化管や鼻腔、気管などの内壁は、粘液に覆われていて、細菌などの異物の付着や増殖を防いでいる。)
  • リゾチーム(細菌の細胞壁”ペプチドグリカン”を特異的に分解する酵素。だ液や涙などの成分。総合感冒薬にも含まれている。)

【参考資料】

  • 吉里勝利(2018).『改訂 高等学校 生物基礎』.第一学習社
  • 浅島 誠(2019).『改訂 生物基礎』.東京書籍
  • 吉里勝利(2018).『スクエア最新図説生物neo』.第一学習社
  • 浜島書店編集部(2018).『ニューステージ新生物図表』.浜島書店
  • 大森徹(2014).『大学入試の得点源 生物[要点]』.文英堂
  • 河本宏(2011).『もっとよくわかる!免疫学』.羊土社

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