【45】胚軸の決定
イモリの未受精卵には、卵黄の他、母親の細胞が合成した様々なmRNAやタンパク質(母性効果因子)が蓄えられている。
①卵に精子が進入すると、表層が回転し、精子進入点の反対側に灰色三日月(環)が現れる。
この時、微小管とモータータンパク質の働きにより、②植物極付近のディシェベルドタンパク質(母性効果因子)も帯域に移動する。
③ディシェベルドタンパク質が移動した先の帯域(背側中胚葉)では、βカテニン(合成&分解を繰り返している)の分解が阻害されて蓄積する。
βカテニンは、胞胚期までに核に移動してノーダル遺伝子が発現する。
もともと帯域では、植物極側のVgeTなどの母性効果因子の影響でノーダル遺伝子が発現しているので、背側から腹側にかけてノーダルタンパク質の濃度勾配ができる。
④高濃度のノーダルタンパク質によって、背側中胚葉(原口背唇部・予定脊索域)で、ノギン遺伝子やコーディン遺伝子が発現する。
⑤ノギンタンパク質やコーディンタンパク質は、原腸胚の背側で“背側中胚葉”から隣り合う“背側外胚葉”に移動する。
⑥外胚葉の細胞は、細胞膜の受容体がBMP(タンパク質)と結合すると“表皮”に分化し、BMPと結合しなければ“神経”に分化する。
ノギン&コーディンは、BMP(タンパク質)と受容体との結合を阻害するので、ノギン&コーディンが移動した先の背側外胚葉は“神経”に分化する。
【補足】
- 母性効果因子(未受精卵が、母親の細胞から貰うmRNAやタンパク質。イモリ胚では、ディシェベルドタンパク質、βカテニンmRNA、VegT mRNA、Vg1mRNAなど。)
- 胚性遺伝子(胚/受精卵の遺伝子。母由来の遺伝子&父由来の遺伝子。)
【参考資料】
- 吉里勝利(2018).『改訂 高等学校 生物基礎』.第一学習社
- 浅島 誠(2019).『改訂 生物基礎』.東京書籍
- 吉里勝利(2018).『スクエア最新図説生物neo』.第一学習社
- 浜島書店編集部(2018).『ニューステージ新生物図表』.浜島書店
- 大森徹(2014).『大学入試の得点源 生物[要点]』.文英堂