【44】局所生体染色法
イモリやカエルの胚に、中性赤、ナイル青、ビスマルクブラウン、ヤヌス緑などの色素を染み込ませた小さな寒天片を押しつけておくと、寒天片が接した部分だけを着色できる。
着色部を追跡することで、胚のどの部分が、どんな組織や器官に分化するのか確かめることができる。
局所生体染色に利用できる色素には、いくつかの条件がある。
- 染色部位の周囲へ拡散しない。(染色した“局所”の分化する先を知りたい。)
- 細胞の活動に影響を与えない。(染色した胚が死んでしまったり、染色の有無が発生の過程に影響してはならない。)
- 細胞内で分解されない。(染色した後に“変色”しない。)
フォークト(1929年)は、局所生体染色によって、イモリ胚の原基分布図(予定運命図)を描いた。
フォークトの原基分布図(予定運命図)は、シュペーマンの交換移植実験、“形成体”と“誘導”、中胚葉誘導、母性効果遺伝子と胚性遺伝子など、様々な研究につながっている。
【補足】
- 中性赤(ニュートラルレッド。生体に無害な色素。生細胞に取り込まれ、細胞質中の顆粒やミトコンドリアを染色する。死細胞では核を染色する。)
- ナイル青(ナイルブルー。生体に無害な色素。染色体に結合する。)
- ビスマルクブラウン(生体に無害な色素。酸性ムチンと結合する。)
- ヤヌス緑(ヤヌスグリーン。生体に無害な色素。ミトコンドリアを染色する。)
【参考資料】
- 吉里勝利(2018).『改訂 高等学校 生物基礎』.第一学習社
- 浅島 誠(2019).『改訂 生物基礎』.東京書籍
- 吉里勝利(2018).『スクエア最新図説生物neo』.第一学習社
- 浜島書店編集部(2018).『ニューステージ新生物図表』.浜島書店
- 大森徹(2014).『大学入試の得点源 生物[要点]』.文英堂
- 富士フィルム和光純薬株式会社(2019). https://labchem-wako.fujifilm.com/jp