【15】コハク酸脱水素酵素
FAD(Flavin adenine dinucleotide/フラビンアデニンジヌクレオチド)は、コハク酸脱水素酵素(コハク酸デヒドロゲナーゼ)の補酵素として働いている。
FADには、コハク酸脱水素酵素の“活性部位”を形作るとともに、コハク酸から奪った“水素”をミトコンドリア内膜の“電子伝達系”へと運搬する重要な役割がある。
水素を奪ったFAD(還元型補酵素“FADH2”)は、ミトコンドリア内膜の“電子伝達系”で酸化され(水素を奪われ)、再びミトコンドリア・マトリックスのクエン酸回路に戻ってくる。
【補足】
- 呼吸(有機物を段階的に分解しながらATPを合成する一連の反応。酸素を必要とする。)
- 解糖系(呼吸の第1段階。細胞質基質で進む。)
- クエン酸回路(呼吸の第2段階。ミトコンドリアのマトリックスで進む反応。ピルビン酸がクエン酸を経て、段階的に“脱水素反応”や“脱炭酸反応”などを受けてオキサロ酢酸になる。オキサロ酢酸は再びクエン酸に再生される。)
- 電子伝達系(呼吸の第3段階。ミトコンドリアの内膜で進む。)
- NAD+(Nicotinamide adenine dinucleotide。酸化型/水素を結合していない状態。脱水素酵素の補酵素として働く。)
- NADH+H+(またはNADH2。NAD+の還元型/2個の水素イオンを運搬している状態。電子伝達系で電子供与体/水素供与体となる。)
- FAD(Flavin adenine dinucleotide。酸化型/水素を運搬していない状態。コハク酸脱水素酵素の補酵素として働く。)
- FADH2(FADの還元型/2個の水素イオンを運搬している状態。電子伝達系で電子供与体/水素供与体となる。)
- 補酵素(酵素の一部として働く低分子。酵素のタンパク質部分“アポ酵素”との結合は弱く、“透析”により分離できる。FADは“アポ酵素”と共有結合で“強力”に連結しており“透析”では分離できないので、厳密には“補欠分子族”と呼ぶ。)
- ミトコンドリア(呼吸の場となる細胞小器官)
- マトリックス(ミトコンドリアの内膜の内側。クエン酸回路にかかわる酵素を含む。)
- クリステ(ミトコンドリアの内膜がマトリックス側に突き出した”ひだ”の部分。電子伝達系にかかわる膜タンパク質が存在する。)
【参考資料】
- 吉里勝利(2018).『改訂 高等学校 生物基礎』.第一学習社
- 浅島 誠(2019).『改訂 生物基礎』.東京書籍
- 吉里勝利(2018).『スクエア最新図説生物neo』.第一学習社
- 浜島書店編集部(2018).『ニューステージ新生物図表』.浜島書店
- 大森徹(2014).『大学入試の得点源 生物[要点]』.文英堂