【72】淡水湖の季節変化
淡水湖の表層では、春と秋に生じる対流が、深層に蓄積した栄養塩類を表層に供給することで、藻類が大発生する。
〈冬〉深層(4℃)に対して、表層の水温が低いので、対流が起こらない。深層から表層に栄養塩類が供給されず、光合成に必要な光や温度の条件も不足しているので、藻類は少ない。
〈春〉深層と表層の温度差がなくなり、対流によって深層から表層に栄養塩類が供給される。光合成に必要な光や温度の条件が充分になると、藻類が増える。
〈夏〉深層(4℃)に対して、表層の水温が高いので、対流が起こらない。深層から表層に栄養塩類が供給されないので、表層の栄養塩類が使い果たすと藻類は減少する。光合成に必要な光や温度の条件は良いものの、表層の栄養塩類が少ないので、藻類は少ない。
〈秋〉深層と表層の温度差がなくなり、対流によって深層から表層に栄養塩類が供給される。光合成に必要な光や温度の条件が充分な間は、藻類が増える。
【補足】
- 藻類(光合成を行う生物のうち、進化の過程で一度も陸上に進出したことのない生物の総称。一次共生で葉緑体を獲得した“緑藻”、“紅藻”、“灰色藻”や、二次共生で葉緑体を獲得した“珪藻”、“ユーグレナ藻/ミドリムシ類”、“渦鞭毛藻”など、様々な系統の光合成生物を含む。)
- 大型藻類(ワカメ、アオサ、ヒジキ、テングサなど、目視可能なサイズの大型の藻類。)
- 微細藻類(ボルボックス、ミドリムシ、ケイソウなど、顕微鏡レベルの微細な藻類。)
- プランクトン/浮遊生物(大型のクラゲから微小なミドリムシまで、水の流れに逆らってまで遊泳する能力を持たない浮遊生物。)
- ベントス/底生生物(固着生活のイソギンチャクやフジツボ、泥中生活のゴカイやシジミ、水底付近で暮らすザリガニやヒトデなどの底生生物。)
- ネクトン/遊泳生物(大型の魚やイカ、鯨類など、水の流れに逆らって遊泳する能力を持つ遊泳生物。)
- 栄養塩類(アンモニウム塩、硝酸塩、リン酸など。光合成で合成する炭水化物には含まれないものの、アミノ酸や核酸、光合成色素などの材料となるN、P、K、Ca、Naなどの元素を含む。)
【参考資料】
- 吉里勝利(2018).『改訂 高等学校 生物基礎』.第一学習社
- 浅島 誠(2019).『改訂 生物基礎』.東京書籍
- 吉里勝利(2018).『スクエア最新図説生物neo』.第一学習社
- 浜島書店編集部(2018).『ニューステージ新生物図表』.浜島書店
- 大森徹(2014).『大学入試の得点源 生物[要点]』.文英堂
- 馬渡峻輔(1999).『藻類の多様性と系統(バイオダイバーシティ・シリーズ)』.裳華房