【70】8の字ダンス
ミツバチは、餌場(花蜜や花粉の豊富な花畑)の位置を“ダンス”で仲間に知らせている。
餌場から巣に帰ってきた働きバチは、“暗闇&垂直”の巣盤の表面で、巣から見た餌場の“方角&距離”を、仲間たちに伝えなければならない。
そこでミツバチは、巣盤の“垂直な壁面”を“水平な地面”に、“鉛直上向き方向”を“太陽の方向”に見立てて、8の字ダンスを踊る。
8の字ダンスでは、“鉛直上向き方向ーミツバチの直進方向”の角度が、“太陽の方角ー餌場の方角”の角度を示している。
真っ暗な巣の中、周囲の働きバチたちは、目で“見る”のではなく、触覚で“触れる”ことで、8の字ダンスが示す餌場の“方角&距離”を知る。
巣から餌場までの距離が近い場合(巣から50〜100m程度まで)は、円形ダンスによって“近い”ことだけを伝える。
【補足】
- ニホンミツバチ(Apis cerana/日本の在来種。花の蜜や花粉を餌にする“花蜂”で、虫媒花にとっては重要な訪花昆虫。野生では、樹洞の中などに営巣する。早春、女王蜂は若い新女王蜂に巣を託し、コロニーの半数を連れて暖簾分け“分封”をする。天敵のオオスズメバチにも“熱殺蜂球”で対抗しながら共存している。)
- セイヨウミツバチ(Apis mellifera/明治時代にアメリカから日本に持ち込まれた外来種。各地で養蜂され、蜂蜜採取や農作物の受粉などに活躍している。日本では、天敵のオオスズメバチに対抗する手段がなく、なかなか野生化できない。)
- 巣盤(ハチの幼虫が暮らす六角形の部屋“育房”が多数並んだ板。野生のミツバチ巣は、樹洞のような閉鎖空間に作られ、数枚の巣盤が垂直に吊るされた状態になっている。)
【参考資料】
- 吉里勝利(2018).『改訂 高等学校 生物基礎』.第一学習社
- 浅島 誠(2019).『改訂 生物基礎』.東京書籍
- 吉里勝利(2018).『スクエア最新図説生物neo』.第一学習社
- 浜島書店編集部(2018).『ニューステージ新生物図表』.浜島書店
- 大森徹(2014).『大学入試の得点源 生物[要点]』.文英堂
- 田中肇(2001).『花と昆虫〜不思議なだましあい発見記』講談社