【65】アメフラシ&慣れ
アメフラシ(軟体動物/腹足鋼/ウミウシ類)の“水管“を刺激すると”鰓“を引っ込める。
”鰓引っ込め反射”は、"水管”からの感覚ニューロンと”鰓”に向かう運動ニューロンの間のシナプスを、興奮が”伝達”することで起こる。
しばらく”水管”への刺激を続けると、”水管”から続く感覚ニューロンの神経終末で、Ca2+チャネルの不活性化や、シナプス小胞の不足により、神経伝達物質の放出量が減少してしまう。
神経伝達物質の放出量が少ないと、シナプス後細胞のEPSP(興奮性シナプス後電位)が、活動電位の発生に必要な閾値に届かなくなり、興奮の”伝達”が不安定になる。
”水管”を刺激しても、”水管”の感覚ニューロンから”鰓”の運動ニューロンへ興奮が安定して伝達されないため、一時的に“鰓”を引っ込めなくなる。(短期の慣れ)
さらに”水管”を刺激し続けると、”水管”からの感覚ニューロンの神経終末では、シナプス小胞の開口部が少なくなってエキソサートーシスが減少し、長期間にわたって“鰓”を引っ込めなくなる。(長期の慣れ)
【補足】
- アメフラシ(軟体動物門腹足鋼。巻貝の仲間。貝殻を失った “海のナメクジ”。)
- 水管(海水を取り込んで、老廃物の排出などを行ったり、海水を噴射して移動したり。貝やイカなどの軟体動物の他、ウニやヒトデなどの棘皮動物にも同様の器官を持つ。)
- シナプス(ニューロンとニューロンの接続部。シナプス前細胞から分泌された神経伝達物質が、シナプス後細胞の受容体に結合することで”興奮が伝達”される。)
- エキソサイトーシス(細胞内の小胞と細胞膜が融合することで、小胞内の物質が細胞外に放出される現象。)
- エンドサイトーシス(細胞外の物質を、細胞膜で包み込みながら小胞をつくり、細胞内に取込む現象。)
- EPSP(興奮性シナプス後電位。神経伝達物質の受容&Na+流入によって、シナプス後細胞の細胞体に生じる膜電位。閾値以上のEPSPが生じると、周辺の電位依存性Na+チャネルも一斉に開いて大量のNa+が流入し、活動電位が発生する。)
【参考資料】
- 吉里勝利(2018).『改訂 高等学校 生物基礎』.第一学習社
- 浅島 誠(2019).『改訂 生物基礎』.東京書籍
- 吉里勝利(2018).『スクエア最新図説生物neo』.第一学習社
- 浜島書店編集部(2018).『ニューステージ新生物図表』.浜島書店
- 大森徹(2014).『大学入試の得点源 生物[要点]』.文英堂
- 池谷裕二(2013).『単純な脳、複雑な「私」』.講談社
- 池谷裕二(2007).『進化しすぎた脳』.講談社