【38】植生の遷移

溶岩台地のような土壌も種も根もない土地でも、風雨にさらされて風化が進み、鳥や虫に運ばれてきた種子や胞子が発芽して、植物や菌類が根付くようになる。
生き物が暮らすようになれば、枯葉や遺骸や排泄物などが徐々に分解されて土壌ができる。
土壌ができると、より大きな植物が根付き、さらに多くの生き物が生活するようになり、やがて豊かな森になる。

森ができると、林冠の葉が光を遮り、林床は暗くなる。
明るいとよく育つ陽樹(コナラ、クヌギ、アカマツ、カラマツ、シラカンバ etc.)も、幼木は、親木の下の暗い林床では成長できない。
一方、明るいと陽樹に先を越されてしまう陰樹(タブノキ、シイ、カシ、ブナ、ミズナラ、トウヒ、シラビソ、コメツガ、エゾマツ、トドマツ etc.)も、暗い林床では陽樹より先に成長できる。

「売上」から「必要経費」を差し引くと、「利益」が残る。
植物の場合、「光合成速度」から「呼吸速度」を差し引くと、「見かけの光合成速度」が残る。
生産者全体では、「総生産量」から「呼吸量」を差し引くと、「純生産量」が残る。

遷移が進むと、やがて生態系全体での有機物の「総生産量」と「呼吸量」がほぼつりあうようになり、見かけ上の「純生産量」は徐々に小さくなって、現状維持の“極相林”となる。
【補足】
- 植生(その土地、地域ごとに生息している植物の種類。)
- 生物相(その土地、地域ごとに生息している生物の種類。)
- 遷移(ある土地の植生は、年月の経過とともに変化してく。)
- 腐植土層(動物の排泄物や死骸、植物の落枝落葉などが堆積し、微生物によって分解された有機物の層。いわゆる肥沃な土壌の層。)
- 陽樹(比較的明るい環境に適応した樹種。全般に成長速度は速いけれど、暗い環境ではあまり成長できない。風散布の小さい種子をつける植物が多い。)
- 陰樹(比較的暗い環境に適応した樹種。全般に成長速度は遅いけれど、暗い環境でもゆっくり成長できる。動物散布の大きい種子をつける植物が多い。)
- 極相(行き着くところまで遷移が進み、生物相が”極まった”状態。一見すると遷移が停滞しているが、倒木などによって部分的には遷移をくり返している。)
【参考資料】
- 吉里勝利(2018).『改訂 高等学校 生物基礎』.第一学習社
- 浅島 誠(2019).『改訂 生物基礎』.東京書籍
- 吉里勝利(2018).『スクエア最新図説生物neo』.第一学習社
- 浜島書店編集部(2018).『ニューステージ新生物図表』.浜島書店
- 大森徹(2014).『大学入試の得点源 生物[要点]』.文英堂