【34】インスリン&グルカゴン
ヒトの血糖値は、空腹時で約0.1%ほどに保たれている。“血糖”は血液中のグルコース(ブドウ糖)のこと。グルコースは“呼吸”の基質であり、細胞がエネルギーを獲得し続ける(ATPを合成&分解し続ける)には、常に一定量が血液中に流れていなければならない。
食事の後は、小腸から血液中にグルコースが吸収され、血糖値(血液中のグルコース濃度)が上がる。
すい臓の“ランゲルハンス島”のB細胞は、血糖値の上昇に気づくと、血糖値を下げるホルモン“インスリン”を血液中に分泌(内分泌)しはじめる。
肝細胞や筋細胞が“インスリン”を受け取ると、血液中のグルコース(血糖)を取り込んで、“グリコーゲン”に合成して“貯蓄”する。
血液中のグルコース(血糖)が減れば、インスリンの分泌も減り、血糖値は一定に保たれる。
小腸からのグルコース吸収が無い“食間”は、すい臓の“ランゲルハンス島”にいるA細胞が、血糖値を上げるホルモン“グルカゴン”を分泌し続けている。
肝細胞や筋細胞が“グルカゴン”を受け取ると、“貯蓄”していた“グリコーゲン”を切り崩して“グルコース”に分解し、血液中に放出する。
細胞たちは、血液中のグルコース(血糖)をエネルギー源として“呼吸”に使いながら、次の食事までを何とかやり過ごす。
【補足】
- グルコース(単糖類/ブドウ糖/細胞内の“呼吸”によって段階的に二酸化炭素と水に分解され、ATPを合成するエネルギー源になる。)
- 血糖(血液中の糖分。ヒトの血糖値は空腹時で、0.1[%]=0.1[g/100ml]=100[mg/100ml]ほど。)
- グリコーゲン(多数のグルコースが結合した多糖類。高分子で血しょうに溶けない。肝臓や筋肉に蓄えられている。)
- インスリン(すい臓のランゲルハンス島B細胞から分泌されるホルモン。肝細胞や筋細胞などに作用し、グリコーゲンの合成や呼吸を促進することで血糖値を下げる。)
- グルカゴン(すい臓のランゲルハンス島A細胞から分泌されるホルモン。肝細胞や筋細胞などに作用し、グリコーゲンの分解を促進することで血糖値を上げる。)
- 肝門脈(小腸から肝臓へ向かう静脈。食後に血糖値が高い血液が流れる。)
- 肝臓(ヒトでは最大の臓器。常に全身の約30%もの血液が流れている。血糖値の調節、尿素の合成、アルコールの分解、血しょう中のタンパク質諸々の合成など、多彩な仕事を引き受けている。)
- すい臓(インスリンやグルカゴンなどのホルモンを合成&分泌する“内分泌腺”であると同時に、リパーゼやトリプシンなどの消化酵素を合成&分泌する“外分泌腺”でもある。)
- ランゲルハンス島( A細胞やB細胞が集まって“島”のように見える組織。すい臓内に100万個程ある。)
【参考資料】
- 吉里勝利(2018).『改訂 高等学校 生物基礎』.第一学習社
- 浅島 誠(2019).『改訂 生物基礎』.東京書籍
- 吉里勝利(2018).『スクエア最新図説生物neo』.第一学習社
- 浜島書店編集部(2018).『ニューステージ新生物図表』.浜島書店
- 大森徹(2014).『大学入試の得点源 生物[要点]』.文英堂