【13】呼吸~電子伝達系
電子を伝達する代謝系だから“電子伝達系”。呼吸の”電子伝達系”は、ミトコンドリア内膜にある様々な”膜タンパク質”の間を、電子が受け渡されることで進む。ミトコンドリア内膜が、内側(マトリクス側)に”ひだ”状に張り出して”クリステ(隔壁)”を作っているのも、内膜の表面積を広げてより多くの”膜タンパク質”を”泳がせておく”には都合が良い。
”電子伝達系”は、ダムに水をためて放流・発電する”水力発電”のようなもの。
ただし、ダムには自然に水が溜まるわけではなく、バケツ(還元型補酵素)を使って少しずつためなければならない。ダム(ミトコンドリア内膜と外膜の間)に水(水素イオン)が溜まれば、落差(濃度勾配)を利用して放流し、発電機(ATP合成酵素)で発電できる。
”電子伝達系”の”基本的な流れ「①還元型補酵素(NADH&H+,FADH2)の酸化(脱水素反応)→②ミトコンドリア内膜を挟んだH+の濃度勾配の広がり(水素イオンを膜間にどんどん詰め込む!)→③ATP合成(水素イオンを放流!)」を押さえておきたい。
還元型補酵素(NADH+H+)の場合、1回につき”3つ”のプロトンポンプ(水素イオンを能動輸送!)を動かして、水素イオン”3つ分”の濃度勾配を作れる。
還元型補酵素(FADH2)の場合、1回につき”2つ”のプロトンポンプ(水素イオンを能動輸送!)を動かし、水素イオン”2つ分”の濃度勾配を作る。
【補足】
- 呼吸(有機物を段階的に分解しながらATPを合成する一連の反応。酸素を必要とする。)
- 解糖系(呼吸の第1段階。細胞質基質で進む。)
- クエン酸回路(呼吸の第2段階。ミトコンドリアのマトリックスで進む。)
- 電子伝達系(呼吸の第3段階。ミトコンドリアの内膜で進む。)
- NAD+(Nicotinamide adenine dinucleotide。酸化型/水素を結合していない状態。脱水素酵素の補酵素として働く。)
- NADH+H+(またはNADH2。NAD+の還元型/2個の水素イオンを運搬している状態。電子伝達系で電子供与体/水素供与体となる。)
- FAD(Flavin adenine dinucleotide。酸化型/水素を運搬していない状態。コハク酸脱水素酵素の補酵素として働く。)
- FADH2(FADの還元型/2個の水素イオンを運搬している状態。電子伝達系で電子供与体/水素供与体となる。)
- ミトコンドリア(呼吸の場となる細胞小器官)
- マトリックス(ミトコンドリアの内膜の内側。クエン酸回路にかかわる酵素を含む。)
- クリステ(ミトコンドリアの内膜がマトリックス側に突き出した”ひだ”の部分。電子伝達系にかかわる膜タンパク質が存在する。)
- ATPアーゼ(ATP合成/分解酵素。ATPを分解することで、濃度勾配に逆らって水素イオンを輸送するポンプとしての機能と、濃度勾配に従って水素イオンを輸送することでATPを合成する機能と、相反する機能を備えた膜タンパク質。)
【参考資料】
- 吉里勝利(2018).『改訂 高等学校 生物基礎』.第一学習社
- 浅島 誠(2019).『改訂 生物基礎』.東京書籍
- 吉里勝利(2018).『スクエア最新図説生物neo』.第一学習社
- 浜島書店編集部(2018).『ニューステージ新生物図表』.浜島書店