【10】細胞分裂と微小管

細胞分裂において、分裂前の母細胞の染色体は、分裂後の2つの娘細胞に“同じ数ずつ”分配されなければならない。前期に凝集した染色体が“X字型”をしているのも、中期に染色体が赤道面に並ぶのも、“均等に分ける”ためには都合が良い。 

前期から中期にかけて、細胞の両極から赤道面に向けて“紡錘糸(微小管)”が伸びてくる。微小管は、その成分となるタンパク質”チューブリン“を連結(重合)させることで伸びていく。このとき“チューブリン”が新たに連結して付け加わる方向を微小管の+端、反対側をー端と呼ぶ。

中期から後期にかけては、微小管の上を決まった方向に“歩く”2種類のモータータンパク質の出番。「ダイニン」は、染色体の中央部のくびれた部分(動原体)に“踏んばりながら、微小管の上を”ー端に向けて歩く“ことで、染色体を引っ張っていく。「キネシン」の方は、染色体に付着せずに赤道面付近で重なり合ってしまった微小管の隙間で、それぞれの微小管の”+端に向けて歩く“ことで、それぞれの微小管を両極へ”押し戻す“。

紡錘体のことを”分裂装置“と呼ぶけれど、まったくその仕組みは機械的で”装置“と呼ぶにふさわしい。

【必要な知識】

  • 母細胞(分裂前の細胞)
  • 娘細胞(分裂後の細胞)
  • 染色体(DNAがタンパク質”ヒストン“に巻きつき、整然と折り畳まれた“糸状”の構造。分裂期に見られるX字型の染色体は、分裂期に入る前にこっそり複製された後の仮の姿。)
  • 微小管(細胞骨格の中で“最も太い”けれど“微小”管。タンパク質“チューブリン”が螺旋状に重合した繊維。)
  • ダイニン(微小管の表面を、+端からー端に向かって歩くモータータンパク質。“歩く”際にはATPを消費する。)
  • キネシン(微小管の表面を、ー端から+端に向かって歩くモータータンパク質。もちろんATPを消費する。)
  • モータータンパク質(ATPと結合・分解し、その立体構造が変化することで、ATPの化学エネルギーを運動エネルギーに変換するタンパク質。)
  • 紡錘体(分裂期に現れる。細胞の両極から伸びた紡錘糸/微小管が、赤道面に並んだ染色体に結合すると、全体的に糸巻形/紡錘形に見える。)

【補足】

  • 吉里勝利(2018).『改訂 高等学校 生物基礎』.第一学習社
  • 浅島 誠(2019).『改訂 生物基礎』.東京書籍
  • 吉里勝利(2018).『スクエア最新図説生物neo』.第一学習社
  • 浜島書店編集部(2018).『ニューステージ新生物図表』.浜島書店
  • 大森徹(2014).『大学入試の得点源 生物[要点]』.文英堂

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